machikochi(マチコチ)

※こちらの記事は、「SAISON CHIENOWA」より流用しております。<流用元:https://www.saison-chienowa.jp/articles/Qghk02oP

女性がリーダーとして活躍する社会」を実現するためには、何が必要なのでしょうか? 働くママ向けの制度、女性管理職を増やす施策など、近年、さまざまな企業が意欲的に取り組んでいます。しかし、働く女性自らが、「自信」を持つ思考づくりも、必要ではないでしょうか。

クレディセゾンには、仕事に対する考えや視野を広げ、個々のキャリア形成をサポートする社内プログラム「ラーニング・カフェ」があります。先日、CHIENOWA主催のラーニング・カフェが実施され、アメリカで「Gender Equity(ジェンダー・エクイティ)に基づいた女性のビジネス進出」に取り組むジェン・ウィリーさんに登壇いただきました。

「女性たちが自信を持ち、イノベーションを起こす」ためのヒントを、彼女の経験も交えながらワークショップ形式でお話いただきました。今回は、その様子をレポートします。

文:CHIENOWA編集部 撮影:相良博昭


プロフィール

ジェン・ウィリー(Jenn Willey)

米国WetCement社の創業者&CEO。「女性の働き方改革」を専門として活躍する元ニュースキャスター。WetCement社では、セールスマーケティング戦略の開発やチームのコーチング、「Gender Equity」という概念の普及と浸透など、独自のソリューションを企業に提供している。また、ジェンダーをテーマに、男女間のコミュニケーションや、意思決定のプロセスの違いを見つけ、女性がビジネスで活躍する環境を提唱している。2018年2月にアメリカ・フロリダで開催された『iMedia Brand Summit USA』に登壇するほか、日本でも『ad:tech tokyo 2018』などで講演を行っている。日本企業の社内セミナー招致は、クレディセゾンが初めて。

https://www.wet-cement.com/


女性のキャリアアップに必要な「自信」を引き出すための4つのヒント

ジェン・ウィリーさんをお迎えした、ワークショップ形式の社内プログラム。ジェンさんは、テレビのニュースアンカーとして活躍後、さまざまな企業を経て起業。また、Gender Equity(ジェンダー・エクイティ)という概念を提唱している方でもあります。日本でよく使われている「Gender Equality=男女平等」ではなく、「Gender Equity=男女公正」を次世代の概念として普及や浸透を目指しています。

ジェンさんのお話によると、「平等(Equality)」という考え方のうえでは、全員が等しく、同じスタートラインに立ち、男性も女性も子どもも、同じ機会や手段が与えられていますが、「公正(Equity)」は、男性は男性に、女性は女性に、子どもは子どもに合った状況や性差に応じて、手段や機会がカスタマイズされるものだと言います。

つまり、「老若男女それぞれの特性に合わせて公正な環境を与えられる社会」の実現を目指しています。

「Gender Equity=男女公正」について説明するジェン・ウィリーさん

 

今回のワークショップでジェンさんは、参加したクレディセゾン社員に向けて、「女性たちにもっと自信を持ってほしい」というメッセージを送りました。

アメリカの経済誌『Forbes』によると、管理職のうち女性が30%以上を占める企業は、純利益率が上昇したというデータがあるそうです。しかし、日本では「管理職のうち女性は11%」にとどまるといいます(ボストンコンサルティンググループ調べ / 2017年11月)。

「日本で女性管理職が増えない原因はたくさんありますが、今回は2つに焦点を当ててお話します」と、ジェンさん。1つ目は、出産後の社会復帰でキャリアアップを目指したくても、契約社員やパートタイム勤務を選ばざるを得ないという「マミートラック」の状況に陥るケースが非常に多いこと。

2つ目は、女性自身に「自信」がないことです。それが、昇進を追い求めることや、自らの権利を主張しないことにつながっていると言います。以前、ジェンさんが日本で講演した際に「自分はこうなりたい」と、自信を持って声に出せる女性が少ないことに驚いたそうです。

今回のプログラムが開催された理由は、この2つ目にあります。女性たちが自信を持ってキャリアを構築することは、クレディセゾンひいては、社会全体としても欠かせないことなのです。

今回は、キャリアアップのときに重要なマインドとなる「自信」の引き出し方を、4つのワークショップとともに教えてもらいました。

 

多くの女性社員が参加した。

 

ワークショップ1:5年後の「なりたい自分」を具現化して、自信を引き出す

1つ目のワークショップです。まずは「5年後の理想の姿」について、以下の項目を埋めてみてください。

1.5年後のあなたの理想の姿は?

2.その理想に立ちはだかる障害は?

3.その理想を実現するために、あなたは現在何をしていますか?

4.その理想に近づくために、導いてくれる人は誰ですか?

5.その同志や、応援してくれる人は誰ですか?

このワークショップでは、5年後の姿を具体的に考えることで、自分のなかにある自信を引き出すというもの。なりたい自分や目標を明確にすることが大切です。

「誰にも見せないので、自分の本心を書いてください」とジェンさん。参加者には紙とペンが配布され、みんな真剣な表情で書き出していました。

5年後のなりたい自分について書き出す。

 

日々の小さな行動に対して「自分なら大丈夫」と、意識的に言い聞かせる

この「5年後の自分」を描くワークショップは、ジェンさん自身の経験から生まれたそうです。

会社員時代に、非常に大きな昇進の機会を断ってしまったときの話です。完璧主義者になってしまうマインドを持っていたジェンさんは、自分の能力が100%追いついているかという自信がなかったため、「そのポジションに対して、自分の能力はまだ70%程度だと思うので、辞退します」と伝えたそうです。

すると彼女の上司は「男性ならば、能力が低かったとしてもその仕事を受けるだろう。そして、ポジションについてから必要なスキルを身につけようとするだろう」と言ったそうです。上司からの説得もあって、ジェンさんはその昇進を受けることとなり、重要な機会を得ることができました。

そのとき、「新しい挑戦へのアプローチの仕方が、性別によってこんなにも違うのか」ということに気づいたと言います。さらに、自分のなかにつくっている壁や限界を自覚することは、女性のキャリアにおいて大切なことなのだと。ほかの女性たちの助けになれるように、もっと学びたいと興味が沸いたそうです。

 

男女の思考の違いについて語るジェンさん。

 

チャレンジを躊躇してしまう女性こそ、日々の小さな自分の行動に対して「自分なら大丈夫」と、意識的に言い聞かせることが必要だと言います。

また、5年後のなりたい自分を具体的に思い描き、その目標に向かって仕事の経験を積み上げること。それによって、自分のなかに眠る「自信」が引き出され、前向きにチャレンジできるようになるそうです。

 

ワークショップ2:「完璧主義」を捨て、失敗を恐れない

続いて、2つ目のワークショップです。まずは、以下のチェックリスト、あなたはいくつ当てはまりますか?

□ 自分が詐欺師のように感じる(できる自分を演じてしまう)
□ 自分が特別な人間でないことを、いつ人に知られてしまうだろうか? と不安になる
□ 自分は生まれつき、頭が良くも、才能がありもしない
□ 自分は、現在の肩書、収入、名誉、成功には値しない人間だ
□ もし自分が失敗したら、自分はできそこないの人間であると知られてしまう

 

ジェンさんによる、5つのチェックリスト

 

完璧主義者は燃え尽きる前に、周囲にヘルプを求めること

当てはまる数が多いほど、「インポスターシンドローム」の傾向があるそうです。日本語では「まがい物症候群」とも訳されますが、褒められても、称賛されても、そう言われているのは本来の自分ではないのではないか? 自分は、そんな評価に値しないのではないか? と自己評価が異常に低い状態のこと。

これは、比較的、働く環境下にいる女性に多く見られると、ジェンさんは言います。例えば、インポスターシンドロームの人々は、完璧主義の傾向にあったり、他者に助けを求めることを恐れて頑なに一人で仕事をしたり、多くの責任をこなす「スーパーウーマン」になろうとする傾向にあります。

さらに、「完璧主義者は、自分が完璧だと思うまでやり続けてしまうので、最後に燃え尽きてしまう人も少なくない」と話します。燃え尽き、倒れてしまう前に、周囲にヘルプを求めること、そして、誰しも完璧ではないし、失敗もするという思考に変えることが、キャリアを構築するうえではとても重要です。むしろ、失敗から学ぶことは非常に多く、次の成功に導く過程でもあります。

会場には、管理職やマネージャーを務める男性社員も多く参加していたことから、「もし完璧主義者のメンバーがチームにいる場合は、助けを求められる雰囲気をつくり、チーム全体で助け合いながら仕事を進める環境を整えてほしい」とアドバイスしました。

ジェンさんの話しに聞き入る、管理職やマネージャー陣

 

ワークショップ3:「達成できたこと」を書き出すことで、挑戦する気持ちにはずみをつける

次のワークショップは、自分の成長過程のなかで「達成できたこと」を書き出してみるもの。

例えば、学生時代に賞をもらった、仕事の成果を評価されて昇進した、自分の力でプロジェクトをやり遂げたなど、どんなに小さな成功体験でも、リストとして可視化することで、次のステップに進む弾みになります。

また、つくったリストはパソコンやスマートフォンに入れて、繰り返し確認できるようにします。例えば、毎週金曜日にリストを見返して、新たな成功体験を追加する作業を5分間行うなど、習慣にすることが重要とのこと。

「新しいことや難しいことに挑戦するときは、そのリストを読み返してみましょう。小さな達成経験の積み重ねは、自信の根拠となります」と、ジェンさん。自信はトレーニングによって身につけられることを教えてくれました。

 

ワークショップ4:「自分だけの取締役会」をつくり、自分の現状を把握する

最後のワークショップは、自分を「会社」と見立てて「自分だけの取締役会」を考えるというもの。ジェンさんの講演でも、最も反響のあるセッションだそうです。

企業の取締役会では、CEO、CFOなどさまざまなポジションの人が協力しあいながら、経営を進めていきます。これを真似て、自分一人のための取締役会メンバーを書き出してみるというものです。

メンバーのポジションは全部で4つ。まずは、その役割を紹介します。何人でもよいので、当てはまる人を思い浮かべみてください。

 

▼メンター(指導者)
自分自身を鼓舞しながら、導いてくれる存在です。相談に乗ってくれたり、アドバイスをくれたりするのも、メンターの役割です。

▼メンティー(指導を受ける人)
自分自身がメンターとなる立場の人。通常は後輩のような存在です。誰かのメンターになることで、自分の自信につながったり、新しい自分を知れたりします。

▼パートナー(同志・仲間)
いわゆる同志です。強い信頼関係を持って、正直に本音を言い合える存在です。医者やカウンセリングに通うように、定期的に会って話すことが重要です。お互いの方法論や目標、あるいは弱点などを話し合うことで、それぞれが成長し、悩みを解消することができます。

▼スポンサー(応援者)
女性がビジネスで成功するために、とくに重要なメンバーです。スポンサーは、社内で地位のあるポジションにいて、あなたを後押しして引き上げてくれる人、あなたがいない場でも評価や推薦をしてくれる人、昇級や昇進を手助けしてくれる人です。

信頼できる上司や先輩も当てはまりますが、理想は、社内で関わりのある人のなかで最も責任のある立場の人がよいです。スポンサーを見つけたら、ミッション達成を手助けしてもらえるよう、自分の強みやゴールをその人に共有しておきましょう。

自分だけの「取締役会メンバー」を表した図

 

多様性をもったメンバーを集約することで、自分の状況を知ることができる

メンバーを考えるときに重要なのは、スポンサー以外はなるべく、性別や年齢などに多様性を持たせ、自分の会社だけでなく、ほかの会社の人も含めること。性別によって行動パターンや思考には違いがありますし、ある職場では当たり前のことでも、外では全く常識が異なる場合もあるからです。

また、このメンバーを考えることは、いまの自分の置かれている状況を把握する機会にもなります。ワークショップ1の、なりたい自分や目標を明確にしたら、それを実現するためには「取締役会メンバー」にどんな人がいて、どんなコミュニケーションをとると良いのかが自ずと見えてきます。

最後にジェンさんは、「女性たちは自分のなりたい姿(ゴール)に向かって前進してほしい。そしてそんな女性の近くで働く上司やマネージャーは、彼女たちの良さをどう引き出すか考えてほしい」というメッセージを送りました。

 

自信を持てない女性に対して、男性上司からのアドバイスは?

講演後は、活発な質疑応答の時間がありました。まずは男性の管理職からの「女性社員に新しい仕事を依頼したところ、『私にはできません』と断られてしまった。どのように言えば説得できるか?」という質問。

男性上司が、女性部下の自信を引き出すには、どのような対応をすればよいのでしょうか?

ジェンさんからの答えは、「すべてが完璧でなくてもよい。あなたはその業務に対するスキルも資質も十分に持っている。足りない分は、やりながら学んでいきましょう。というアドバイスをしてみては?」というものでした。100%の自信がなくても、女性に「やってみようかな」と挑戦する気持ちを持たせることが重要とのことです。

 

完璧主義者の自分が「完璧でなくてもよい」と思えるようにするためには?

次の質問は「完璧主義者の自分が、100%の成功以外を妥協と思わずに、自分自身を許せるようになるには?」というもの。

質問者とジェンさん

自身も完璧主義者だったというジェンさん。質問者に対して、「完璧な人なんていない、と自分に言い聞かせる。そして、自分に対して、友人に接するような態度で優しくする。自分に意地悪な評価をせず、自分を褒めてあげること」と、回答しました。

さらに、「100点を目指していた友人が、もし98点しか取れなかったとしても、98点なんてダメじゃない! なんて言わないでしょう? 98点なんてすごいじゃない! って、きっと褒めるはず。それを自分にも同じようにかけてください。肩の荷をおろして、しっかり休みを取って、リラックスして」と、アドバイスしました。

1.5時間を超えるセッションはここで終了です。今回のワークショップでは、「自分を知ること」が自信を引き出すきっかけになるということがわかりました。そのためには、頑張った自分や成果を見直す機会をつくり、なりたい自分に向かって進むこと。そして、ときには周りを頼ってみる勇気を持つことです。

 

Special thanks

KPIソリューションズ様
ジェンさん来日の素晴らしい機会をありがとうございました。

http://kpis.jp/

 

■What’s SAISON CHIENOWA?

クレディセゾンが立ち上げた「セゾン・ワークライフデザイン部」の最初にして、根幹となるプロジェクト。
それが、「新しい働き方と暮らし」をコンセプトにしたウェブサイトです。

名前は、SAISON CHIENOWA。

ワークとライフのバランスって?
自分らしい働き方、生き方って?

人間の「働く」と「暮らす」に複雑に絡み合った多くの問題。
それはまるで、パズルの「知恵の輪」。
だけど、知恵の輪なら解き方は必ずあるはず。

目指したのは、そのヒントが詰まったメディア。
「働く」「暮らす」に関わるたくさんの情報と色々な考えが集まった、本当の知恵の「輪」のような空間。

答えはひとつではなく、組み合わせたり、選んだりできる。
ここに来たひとりひとりが、自分らしい生き方を実現できるように。
そして、知恵の輪が解けた瞬間のような気持ち良さを感じてもらえるように。
「セゾン・ワークライフデザイン部」を中心に、当事者目線で選び抜いた良質なコンテンツを一か所に集め、共感とともにシェアして参ります。

未来の「働く」と「暮らす」は、今のわたしたちに直結しています。
だからこそ、今ここから、これからの生き方を皆でいっしょにデザイン・発信していきたい。そんな想いを込めたメディアです。

※こちらの記事は、SAISON CHIENOWAより流用しております。<流用元:https://www.saison-chienowa.jp/articles/Qghk02oP